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福祉ニュースその3

1.「街に視覚障害者いること知って」外出の3人に記者同行/新潟県

以下、本文です

 昨年10月に新潟市東区で視覚障害のある女性が車にはねられ死亡した事故
を受け、県警は先月、県内30署の交通課長ら54人を集め、視覚障害者が安
全に外出できるようにするための講演会を開いた。講師を務めた県視覚障害者
福祉協会の松永秀夫理事長(72)は、イベントや買い物のため外出する視覚
障害者が増えていることを指摘。「街に視覚障害者が歩いていることを、まず
は知ってほしい」と呼びかけた。また、視覚障害者は車の往来する音を頼りに
するしかないことや、エンジン音が聞こえない車は危険なことを訴えた。
     *
 昨年10月の事故で、死亡した女性はより重度の視覚障害のある姉と一緒に
通勤している途中だった。視覚障害者の外出にはどのような配慮が必要なの
か。単独歩行と盲導犬歩行、ガイドヘルパーによる同行援護を利用する人を取
材した。
■単独歩行 ベンチや排水溝が「ランドマーク」に
 午前7時17分、新潟市西区の新潟西高で公民の教諭として働く栗川治さん
(56)はラジオのスポーツコーナーが始まったのを合図に自宅を出発した。
毎朝決まった時間だ。玄関の引き戸を開けるとあいにくの雨。左手には傘、右
手には白い杖を持って歩き出した。
 自宅の最寄りのバス停まで歩いて約5分。自宅を出てすぐ塀に沿って左へ曲
がり、杖を使ってブロック塀伝いに歩く。ブロック塀が途切れたのを杖で確認
すると、迷わず左に曲がり寺の敷地内へ。「お寺の中を通っていくのが好きな
んです」
 お寺の敷地には点字ブロックはないが、「排水溝のふたを頼りにすれば歩け
るんです」と速度は全く落ちない。25歳の私からみても早歩きに近いスピー
ドだ。
 音声付きの信号がある横断歩道を渡った。歩道に点字ブロックがあるが、バ
ス停の存在がわかるようにはなっていない。栗川さんが右手側に少し大きく杖
を振りながら歩いていると、バス停の前で「コツン」とベンチに当たった。
「これがランドマークなんです」
 バスは混んでおらず、座席に座るとイヤホンを取り出した。音声化された本
でしばし「読書」を楽しむのが日課だという。20分ほど乗って新潟西高前の
バス停に着くと、慣れた足取りでバスを降りた。
 バス停から職場までは黄色の点字ブロックが続く。着任時に点字ブロックを
ひいてもらったのだという。
■盲導犬 買い物に行くのは混雑しない時間帯
 新潟市東区で鍼灸(しんきゅう)院を営む大橋ちあきさん(54)は盲導犬
のホクと生活している。今は光を感知できる程度。ホクは2代目で、昨年の6
月にパートナーになったばかりだ。鍼灸院は自宅に併設されているため通勤は
ないが、買い物に同行させてもらった。
 ホクに花柄の服を着せ、リードとハンドルをつけて自宅を出た。以前、自宅
前の小道から大きな道路に出るところで、急に飛びだしてきた自転車とぶつか
りそうになったことがある。ホクの鼻先を猛スピードで横切ったといい、曲が
り角では慎重になる。パートナーになって日が浅いため、歩道のない道路で
は、中央に寄っていくこともある。
 近くのスーパーに入り、携帯電話で店の事務所に連絡すると店長がやってく
る。店長の腕を大橋さんがつかむと、店長が店頭に並ぶ商品の値段を読み上げ
る。「今日はかぶが98円、小松菜が100円でお買い得ですね。もやしの賞
味期限は……」と案内していく。
 買い物を終えると、駐車場を通って道路へ。住宅街に入ると、右手側で重機
を使った道路工事をしていた。「大きい音を出されると、自転車や車のエンジ
ン音が聞こえづらくなるので危ない」という。住宅の駐車場から車の鼻先が路
側帯に飛び出しているところも。車をよけるために車道に出なければいけない
こともある。
 大橋さんが盲導犬を利用しようと思ったのは13年ほど前。視覚障害者のた
めのパソコン教室に通っていたときに、盲導犬を伴って視覚障害者が風を切る
ようにさっそうと横切っていった。「あんな風に1人で自由に歩きたい」と思
い、利用を申し込んだ。
 知らない人から心ない言葉を浴びせられることもある。買い物に行くのも、
なるべく混雑しない時間帯を選ぶ。「ポイント何倍とかの日は行かないように
しています」。だが、駅で迷っていると案内を申し出てくれることも。「親切
な人もたくさんいます」
■同行援護 風景や街の変化も耳で知るうれしさ
 県警の講演会で講師を務めた松永理事長は、25歳で発病し、30歳で失明
した。現在は左目のみ光を感じ取ることができる程度といい、全国各地である
会議などに出席するため、視覚障害者の外出にガイドヘルパーが無料で付き添
う「同行援護」という制度を利用している。
 午前10時20分。自宅を出ると市社会福祉協議会障がい者訪問介護セン
ターの野中洋子さん(60)が待っていた。あいさつをすると、野中さんはく
るっと回り松永さんの左前にスタンバイ。松永さんが野中さんの右腕をつかん
で「行きましょうか」と声をかけて、歩き始めた。
 バス停まで約5分歩き、区バスに乗り込む。松永さんを椅子に座らせて、野
中さんが左脇に立った。「田んぼに白鳥がいますよ」と野中さんが窓の外の風
景を伝えてくれる。「街の変化も伝えてくれる」と松永さんはうれしそうに聞
いていた。駅に到着するとあいにくの雨。傘をさして銀行へ向かい、ATMで
振り込みをするという。同行援護だと、振込用紙の数字を読んでもらうことも
できて便利だという。
by wappagamama | 2016-02-05 19:43
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