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福祉ニュースその2


1.(私の視点)障害者との共生 「合理的配慮」を考えて


1.(私の視点)障害者との共生 「合理的配慮」を考えて
2016.01.30 朝日新聞 朝刊
 私は出生時に脳性まひになり、手足や言語に障害があるが、小中高校と普通学級に
学び、大学の教育学部を卒業して教員となった。中学校で数学を教えて15年にな
る。
 日本政府が批准した障害者権利条約は、障害のある者が、障害を理由に一般的な教
育制度から排除されないことをうたっている。それは障害のない者と共に学ぶ「イン
クルーシブ教育」の実現であり、生徒だけでなく教職員も障害の有無にかかわらず共
に働く環境づくりが大切だ。
 そのために、4月に施行される障害者差別解消法、改正障害者雇用促進法を、生活
の場に生かしていきたい。法に盛り込まれた差別解消のための「合理的配慮の提供」
がカギになる。それは障害のある者が、ない者と平等な状況をつくるための変更や調
整を意味し、例えば車いす用の設備を整えたり、点字や手話通訳を準備したりするこ
とだ。
 社会生活で不都合が生じないよう工夫してほしいと障害者が要望すれば、「合理的
配慮」の提供が求められる。それは際限のないものではなく、「過度の負担」となら
ない範囲だが、公立学校や行政機関などでは提供が法的義務とされ、提供しなければ
障害者への差別になる。
 合理的配慮の提供は、障害者の私が障害のない人と対等に社会生活を営むうえで生
じる「壁」を取り除くことであり、誰もが自分らしく生きていけるよう社会を変える
ことでもある。障害者が望む合理的配慮は一人ひとり異なり、行政機関などが一方的
に押しつけるものではない。障害者と話し合い、その意向を十分に尊重することが大
切だ。
 これまで、私が「みんなと一緒にやりたい」と伝えても、「何もしなくていい」と
言われてきた。みんなと違う扱いをされ、「差別ではないか」と反論すると「配慮
だ。1人ではできないでしょ」と言われた。これは合理的配慮ではなく、差別意識に
基づく排除だと思う。
 また、周りの人が同情やあわれみから私の車いすを押してくれ、嫌々ながらやって
いることも私は敏感に感じてきた。これでは車いすを押すだけで終わってしまい、社
会は何も変わらない。そして「車いすでの移動は大変だ」と、またしても排除の論理
で語られる。障害者は「合理的配慮」があれば、みんなと一緒に「できる」ようにな
るのに。
 これからは、合理的配慮の提供を通じて人々が障害の特性について正しい知識を得
て理解を深め、共生への道が生まれることを信じる。障害のある教師が合理的配慮を
提供されて働く姿を通して、教育現場から共生社会の礎を築いていくことが、私の大
きな役割だと思う。
 (三戸学:さんのへまなぶ 秋田県公立中学校教諭)
by wappagamama | 2016-02-02 21:14
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