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浪々(ろうろう)介護


 そうやって うるさいとおもいながらも、何故か相手の話に引き込まれ、あいづちを打っているわたし。 

 鍼をした後のお灸、2そう目頃になると、口数が少なくなってきた。
「今まで色んなことをやってきたけど、お灸ははじめでだな 、あらぁー  体の真さ染みでいぐ、これだばええもんだなや!」
と今度は鍼灸の効能についての質問が始まった。
そして、「モット はやぐがらきテレばエガッタなー」


 若かりしころの虚勢を語っていたときの声とは違って、物静かな口調になり、 
話の内容もお連れ合いのことになっている。
「苦労のかけっぱなしだった女房が痴呆症に成って、家の事はなんにもでげにゃぐなってしまった」「むどさがにゃふって(かわいそうで)… やじにゃっふって「仕方なくて)…」と声を詰まらせている。
(アララララ 今さっき くたばれ くそじんじっておもっていたんじゃなかったっけ?)


だからせめて、自分は健康で女房をやしなってミトどりをしなければと、懺悔「ざんげ」のおもいがあるのか、ヘルパーも頼まないで自分でやっているとのコト。
そして、毎年やっていた田畑の事も自分たちが食べる分だけでも作りたいとも言っていた
チョットその体では無理なんじゃないかなと言う思いが強いわたしは、もう少し自分の体もいたわってくださいというしかなかった。


 「家の中は馬小屋だ」と言っていたわりには、加齢臭もしないし、服装もきちんとしているし、玄関に脱いだ革靴もきちんとそろえてあった。


 帰りはタクシーで福祉事務所まで行き、施術券を発行してもらってからまたバスで帰るとのコト
定期バスも2・3時間おきにしかないけど、湯沢プラザで時間を調整シテ帰ると、簡単
に話していた。
そんな思いをしてまでここまで来てくれて、お連れ合いのためにも働けるようになりたいと、その願いは真剣だった。
 だが、福祉事務所に寄って施術県を受け取っても、それは一回の交通費くらいの多趾にしかならない。
なんと矛盾している事だろう!
出来るだけ人に迷惑をかけない様に、自力で一所懸命生きている人にさえも、世間の風は何故にこんなに冷たい。
施術券をもらうように言ったものの、これだったら何の意味があるだろう?…
物凄いむなしさを感じてしまった。
しかも、手続きがやたらと時間がかかって腹が立つとの評判。
その性でまたバスに乗り遅れてしまったらと考えると、余計なことを言わなきゃ良かったと反省している。

 たった1時間の治療時間、その患者さんの人生が、映画のように頭に浮かんだ…。
by wappagamama | 2009-05-11 21:28
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