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ムメノさん 第弐話



その入れ歯の話と、時期的間径がどうだったかは忘れてしまったが、ムメノさんのが砕かれた話がもうひとつ。
一生のうちに一度でいいから指輪をはめてみたいと、年老いても女ごころは夢を抱いていたムメノさん。
娘A枯に相談して買ってもらおうと話が弾んでいた。
幾つに成っても女は女、裕福な家に生まれて育っても、嫁いでからの半生は厳しかった。
が 育ちのいいムメノさんは、持って生まれたのんきな性格が候をなし、悲壮感にちひしがれる事も無く、決行のんきな生活を送っていた。
最愛の旦那繁蔵さんが亡くなった後は、その繁蔵さんが残してくれた遺族年金と、本人の年金の収入で、決行裕福に暮らしていた。
が、世間知らずのムメノさんは贅沢をすることさえ知らず、ひっそりと長男家族と暮らしていた。
そんなムメノさんが始めて言った贅沢。
それが「一生に一度でいいから指輪をはめてみたい」ということだった。
女である娘たちは幾つに成っても女は女だね、夢を叶えてあげようよ、と異口同音に
賛成した。
勿論ムメノさんにはそれくらいのゆとりはあってのことだったので、早速話を進めて
いた。
そこへまたもや長男の一言がムメノさんの夢を砕いてしまった。
「ホッホー おめだ その年に成って指輪でガ? がんおげまで持っていぐ気が?」
同居している息子にそこまで言われたら、指輪などと思ったことのほうが恥だと感じ
てしまったムメノさん。

長男は長男の考えがあって言ったことばなのだろうか?
男には男の考えが会って言ったことばなのだろうか?
自分の発したことばが、それほどまでに人の心を左右するとは思わずに言った事なのだろうか。
その真意を知ろうとしたら、ややっこしいことになるのは目に見えている。
ムメノさんがおとなしく気持をひいてくれたことをよい事に、娘であるわたしたちもムメノさんがそれでいいんだったらと、当たらずさわらづにしてしまった事が今でも悔やまれる。

わたしがもしその時の息子だったら、どうしただろう?家庭の事情は色々あるだろうが、せめて残された老後を、イクバクモ無い余生を、せめてせめて願いを叶えてあげられなかったものだろうか。
そんなムメノさんに、娘としてわたしは、何もシテあげられなかった無力さに、今でも悔いが残る。

 第三話につづく
 
by wappagamama | 2008-10-21 19:16
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