五感くすぐれ イベント花盛り
公開中の「パーフェクト・センス」という英映画は、人間の五感を徐々に奪う感染症が流行する世界を描いた作品だ。これは、あくまでフィクションの世界だが、実社会でも、視覚や聴覚に頼りすぎて、触覚、嗅覚といった、ほかの感覚が鈍っているようなことはないだろうか。最近、はやりの「五感を刺激する」企画やグッズを集めてみたので、一度、体験してみては。 ■いや応なく動作意識 芸術家で、建築家の荒川修作さんらが設計した集合住宅「三鷹天命反転住宅」(東京都三鷹市)で五感を刺激してみてはどうか。 床は緩やかに傾き波打つ。それにカラフルな壁や天井、球形の部屋--この家に足を踏み入れた人はボーッとしてはいられなくなる。 いや応なく自らの身体や動作を意識してしまう。何しろ油断していると転んでしまいそうだ。球形の部屋で話すと、声が乱反射して不思議な響きを生み、床の凸凹は青竹を踏んでいるかのように足裏を刺激する。 この住宅は全部で9戸あるが、うち2戸が短期滞在(7日間で、3LDKが9万5000円、2LDKが8万1000円)用に開放されている。 ■温度、凹凸リアルに 「ギャラリーTOM」(東京・渋谷区)は、「手で見る」美術館だ。展示品に触れられる企画展を随時、開催している。今なら、2月5日まで、世界的な彫刻家・安田侃(かん)さんの作品展「触」(一般600円)が開かれている。触ってみると、大理石の冷たさ、滑らかさ、ザラザラ感などがリアルに感じられ、目で見るだけよりも何倍も楽しめる。 この美術館は、息子が視覚障害者だった夫婦が私財をなげうって作り、主に現代作家の彫刻や立体作品などの企画展を催している。 ■懐かしい香り楽しむ 日本には昔から香りを「聞く」という伝統があるが、嗅覚をうまく刺激すれば、気分転換ができるかもしれない。最近は西洋から伝わったアロマセラピーで使われる精油にも、国産のものが登場してきた。 正(せい)プラス(岐阜県高山市)の精油「yuica(ゆいか)」は、飛騨高山の森林に生えている黒文字(くろもじ)や、あすなろ、姫小松などの木々の間伐材を原材料に、水蒸気蒸留法で抽出した精油(5ミリ・リットルで945円~1万605円)だ。これを使えば、都会の真っただ中でも森林浴気分を味わえる。同社によると、国産の精油は外国産に比べて、日本人にとってなじみが深い香りにも感じるので、利用者からは、より「懐かしい」「落ち着く」といった感想が聞かれるという。 ■視覚を「引き算」 五感を研ぎ澄ませるためにはどうしたらいいか。一つの効果的な手法が、視覚をあえて使えなくする「引き算」方式だ。暗闇で対話をしながら、食事や探検を楽しめるイベントがある。 東京・渋谷区で体験できる「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というエンターテインメントは、光が完全に遮断された真っ暗な闇の中で約90分、様々な体験をする。参加者は、手に白杖(はくじょう)を持って、「暗闇の先達」でもある視覚障害者の案内で、暗闇に入っていく。闇の中には、音や香り、手触りなどで、眠っていた感覚を呼び覚ます「仕掛け」が、いろいろと施されている。 ここでは、あえて「仕掛け」を詳細に説明しないが、最初は怖くてなかなか足が進まなかったという人も、参加者同士が互いに声を掛け、助け合いながら前進するうち、恐怖心は薄れ、人のぬくもりまでもが感じられるようになるという。 参加料は一般5000円。高いと思うかどうかは、あなた次第だ。
by wappagamama
| 2012-02-05 12:41
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