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三陸ものがたり


三陸物語:東日本大震災 全盲の鍼灸師・藤原正さん/8

 ◇心も体も、こわばって
 見えぬ故に津波の惨状を測りかねていた藤原正さん(53)がそれを体感したのは、はりとマッサージのボランティアのために避難所の大槌高校に通う道すがらだった。
 山際まで押し寄せたがれきや汚泥。漁師が使うブイに足をぶつけた時は驚いた。まちの姿が頭の中にあった地図とは全く変わってしまっている。普通なら7分で着くはずの大槌高校まで20分以上かかった。
 避難所になった体育館のステージに、授業で使うマットを敷き、初日は妻美幸さん(43)と2人で15人ほどマッサージした。足元がおぼつかない高齢者が多く、娘3人が手を引いた。暖房もなく、寒さに震えながら服の上からもんだ。
 5月いっぱいボランティアを続け、数百人の心と体に触れた。「避難しよう」と車で迎えにきた娘と孫の声に、2階から顔を出したおばあちゃん。その眼前で津波が車をのみ込み、自分も家ごと流され、気が付いたらがれきの下だったと吐き出すように語った。娘と孫は戻らなかったという。
 津波で流れる家の2階で手を振る人の姿が脳裏にこびりついたおじいさんもいた。「あれは、助けてという意味なのか、お別れのさよならなのか」と自問していた。
 津波から逃げようとした中年の女性は、年老いた男女に「助けて」としがみつかれた。濁流が間近に迫る。「私、ふりほどいて走ったんです。後ろを見たら、2人はもういなかった。手の感触が腕に残っています」。藤原さんはその腕をひたすらもんだ。
 「誰も泣かず、高揚した口調で、人ごとのように話し続けるんです」。藤原さんの感想は、震災直後の被災地の様子を知る人や、私自身も感じたことだ。「硬直した体」に触れながら、藤原さんは津波が人々の心に残した傷を感じていた。


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by wappagamama | 2011-06-24 17:21
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