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冷房が怖い・人の心が怖い



 大会の開会式での来賓のながぁーい挨拶の話の中に、「この広い体育館の一日の冷房費に触れた後、それもこれも皆様のためにやらせていただきました」的な雰囲気の話が合った。

 その日の仙台は30℃を越える真夏日。
「こんな日に冷房がなかったら大変だったね」と、その冷房に感謝していた。

 ところが、1時間が過ぎ、2時間が過ぎてきたころから私の体に異変が起きてきた。
厚い靴下をはいているのに足が冷たくなり膝から下の素肌になっている部分がジンジンと底冷えしていた。
さらに時間が経過していくうちに、今度は股関節がうずきだした。
このままの状態で後何時間ここにいなければいけないのかと思っただけでも不安になってきた。
電車の中での冷房対策にとバスタオル持参できたのだったが、体育館がこれほどまでに冷えているなどとはおもわなかったものだから、それも更衣室に置いてきてある。
広々とした立派な施設だけに、単独でそこまで取りに行くだけのゆとりなど全くなかった。

 試合中は勝手に会場から出入りができない決まりとなっている。
しかも、団体戦にもエントリーされていたので、容赦なく試合は次々と回ってくる。

 この大会へ望む前から人間関係にひびが入り、団体行動がいつのまにか団体行動でなくなっていたという不安な思いをしていただけに、さらに追い討ちをかけるかのように、股関節の異常が現れてきた。
3試合目の後半、突然その股関節が悲鳴を上げた。
横移動の激しいこのSTTは、足関節・膝関節・股関節・腰の柔軟性がもっとも大切な働きが要求される。
その重要な股関節にブロックがかかったかのように激痛がはしった。
それはまるで、スパナかペンチでおもいっきりはさまれたかのようだった。

左足は床に付くこともできないほどの激痛。
あぁ これが 神経痛というやつかと その突然のしかもはじめての激痛に耐えながら、なんとか試合は終了。

 待期場所に戻り、床に足を投げ出して、股関節に思いっきり力をいれて母指圧迫をしたが、その痛みは簡単には取れない。
その様子にいち早く気づいたエルモ。
投げ出している私の足に顎を乗せて心配そうにしている。

 ボランテァさんが心配してくれて、他の会場で試合を見学していたプロの施術氏を呼んできてくれた。
秋田から参加していたそのIさんは真剣に一所懸命施術を施してくれた。

競技者も応援者も、誰もが試合に夢中になっているさなか、そのIさんは体育館の隅っこに横たわっているわたしの股関節に真剣に取り組んでくれた。
申し訳なさとありがたさを伝えると、「なんもだ おれでも人の役に立てでえがった」と朴訥なIさんのうれしいひとことが身に染みた。

 そうなんです どこで 何をしていても、全盲の人はいつでも誰かのサポートを必要とし、弱視の人たちのように人の世話をやいたり、人の役に立つことが中中できない分、いつの間にか自分でも気づかないうちに最小限度自分のことは自分でやろうという気持ちが強くなっていくと共に、人の世話をやいている人が時としてうらやましくさえ見えることもある。

 でも それも人それぞれで、誰もがそうだとは限らない。

こんな状況のときだけに、Iさんではなく他の誰かがやってくれたとしても、このときのIさんのように真剣に取りかかってくれた人はいなかったでしょう。


単独行動・団体戦・という大きなふたつの不安を抱えながらの東北大会。
それに突然のアクシデント股関節の激痛という最悪な状況下、そんなときのIさんのやさしさはわたしの心に染みました。

 そして第1日目の地元のボランテァの鈴木さん、簡単に事情をお話したらいつも寄り添っていただきました。そして 大の犬好きなのに、一切犬には目もくれず、名前も聞こうともせず、ただわたしへのサポートに専念し、しかもその要領のよさにはただただ敬服いたしました。

そして第二日目、誰から言われたとも泣く、自然体でわたしに声をかけてくれたYちゃん。
「柿崎さん朝食どうする? これからコンビニに行くんだけど一緒に行く?」
丁度エルモの排便に、外に出る私宅をしていたときのグッドタイミング!
「捨てる神あれば、拾う神有」とはよく言ったもの。

 二日目の移動はYちゃんのサポートで安心して行動ができた。

明暗クッキリ人さまざま、温かい心と自分勝手な冷酷な心。
この年になってこんな時限の低いことで、悩んでいなければいけない自分が情けない…
だが、こんなピンチだったからこそ、意外な方向に心が開き、思ってもいなかったハッピーな出来事がもひとつ仙台であった。
次回へ続く。





by wappagamama | 2010-07-25 11:08
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