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前回の続きその5


 「わたしの知り合いにね とぉーっても素晴らしい青年がいるの。その子にね、柿崎さんのこと話したら、ぜひ会ってみたいといってるの。湯沢まで会いに行くって言ってるから会ってくれない?」

箱館在住の友人からの、この一本の電話が事の始まりだった。
何のためにわざわざこんな遠くに会いに来る理由があるのだろうか。
まるで狐につままれたような不思議な話だった。

 電話をくれた友人は、わたしの函館時代から親しくしていただいているゆうじんだったが、どうも 話の内容がよく分からない。
ハイハイいつでもどうぞ と二つ返事が出来るような状況ではなかったので、ひとつふたつ質問してみた。
で分かったことは
その1・その青年は、全盲でありながら一人で全国制覇をしていること。
その2・行った先で講演活動をしている。
その3・行き先々で趣味の写真撮影をして、その写真をカレンダーやポストカードにしたり、個展なども開いている。
そして、その収益金が彼の活動資金となっている。
その4・大学生時代に誤ってメタノールを飲んで突然の失明。
その5・全国ツアーの目的
広く社会の人たちに、視覚障害者に対しての正しい認識を持ってほしい。
そのためには、民家に宿泊し、入浴や食事、初めての家での日常導差まで、全てを間近で見てもらいたい。
と彼の目的とその心意気はよく分かった。が?…。
湯沢まではどうやって来るの・駅から目的の場所までどうやって来るの。
迎えに行けばいいの。
スケジュールの決まっていない旅先でその日の宿泊場所をどうやってきめるの。
費用はどうやって捻出しているの。
行き当たりばったりの行動で、周りはどうやって会わせているの。
と たった一人で呼ばれればどこへでも行くというその行動パターンがわたしにはどうしても理解できなかった。

 交通機関・宿泊場所・目的地までの送迎手段・などなど、視覚障害者であるわたしなどは事前に調べて予約しておかなければ、安心して行動など出来ない。
なのに、それらの予定とか計画とか細かなスケジュールが全く見えてこない。

 そのわたしの疑問を解くためにもう一人の友人、箱館のSさんとの連絡に切り替わった。
そのSさんは全国制覇の青年とは兄弟のように親しい関係だと聞いていた。福祉活動をしている仲間として同じ事務所に所属しているとの事。
だから、その青年の行動スケジュールはよく分かっているものだと思ったが、どうも そうでもないらしい、お互いの行動は観賞しないというかお互いの行動を信頼しあっているというまさにスケールの大きさといい、行動範囲の広さといい、多方面からの信頼度と期待度が半端ではないという人たちであることに驚いた。
そうゆう スケールの大きな行動をしている人たちから見れば、わたしが疑問に思っていることのほうが、理解できないのではないのだろうかとも感じる。
だが やはり 受け入れ側としてみれば、そんなアバウトなことでは計画が立てられない。





そもそも そんなことが理由でわたしの不安度が高まって言った

 そんなときの、予定日直前の本人からのはじめての電話。
わたしの不安な気持ちが見事に彼にぶっつけられてしまったのだった。

 そのことは、勿論箱館の二人の友人たちにもわたしから話した。
わたしにはそれを受け止めるほどの器ではなかったと…折角良かれと思って紹介してくれたのに…。
次回へ続く
by wappagamama | 2010-06-04 18:10
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