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一本の電話その8「きずな」3



  獣医の言ってることに疑惑を感じ、強い口調でもの申した自分にビックリしながらも、獣医の次のことばを待った。 


 今までに見たこともないようなユーパスの様子に、何か大変な事になるのでは、という不安が頭をよぎった。
まんじりともしない夜が明けた早朝、心配して駆けつけてくれたTさんにさえも、ユーパスは出迎えようともしなかった。
ベッドの中で布施をしたままTさんを見上げて、力なく尻尾を振っているだけ。
排泄の回数も頻繁になり、食事や薬も飲もうとしない。
やがてりっちゃんも駆けつけてくれた。
りっちゃんは、 ユーパスを毛布に包み抱いて病院に連れて行こうと、準備してきてくれていた。
だがユーパスは、「さ ユーパス病院に行くよ」というわたしのことばに、よろめく体を支えながら自力で歩いた。


 病院では、前足に点滴を受けながら、尿道へカテーテルを入れ導尿。
処置中の 先生の仕草やことばに、わたしの耳はダンボの耳。
あわただしく動き回る先生を見かねたりっちゃんは、すぐさま先生の助手をはじめた。
みんなは落ち着いている様子で振舞ってはいるが、緊迫感がビンビン伝わってくる。
キットユーパスも、わたしと同じ気持だったのだと思う
相当苦しいはずなのに、治療代の上でなすがままになっていたユーパス。


 導尿していた先生の口から発せられることばで、大変な状況だとわかった。
出てくるものは血尿と血液の塊。
ユーパスを励ましながら抱きかかえていたわたしだったが、自分の血圧が下がっていくような、体から力が抜けていくような、しかも、激しい嘔吐に見舞われた。
そのときわたしの顔色に気付いたTさん、わたしを抱きかかえるようにしてトイレまで連れて行ってくれた。
その間、りっちゃんがユーパスを抱きかかえてくれていたが、だらしないかな私自身も、人の手を貸してもらわなければいけないほど、平常心を失っていた。


処置後は治療台からりっちゃんに下ろしてもらったが、駐車場までは自力で歩いたユーパス。
よろめきながらも、リード歩行しているわたしを気遣っているのが良く分かる。
Tさんもりっちゃんもことば少なめに「ユーパスえらいな?偉い 偉い」と声を詰まらせていた。


 このときわたしは、改めてTさんとりっちゃんの連携プレーの素晴らしさに、ただただ感謝するしかなかった。
だが このふたりの連携プレート、チームプレーのすばらしさは、この後も次々と続いた。
    つづく
by wappagamama | 2009-02-27 17:19
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