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一本の電話その3「新患として来院したTさん」


 きっとまた何かのご縁があるだろうと思っていたわたしの予感は、思いもよらない早い時期に実現した。

 それは最初の出会いからほんの数日後の事だった。
何の前触れも無くいきなり玄関に現れたそのTさんは、こういった。
「あのんしよ? 右の親指がいでふって不自由してルナで、これ なんとがならにゃんしべが?」とのことだった。
確か車のドアに挟んだとか?…
「何とかなるがならにゃがは やってみにゃばわがらにゃんしども?」と言うか言わないうちに「まずなえでもえがらやってたえ?」全くの初診でその治療技術のよしあしもわからないのに、恐ろしく度胸のいい人棚と思った。が あれよこれよと思っているうちに次の瞬間にはわたしの患者と成っていた。


 聞けば鍼・マッサージはすでに経験済みとのこと。
合わせて度胸のよさ も考慮して、いきなり鍼灸治療を開始した。
本来ならば、経絡治療を基本にして、全身調整をした後で、部分的に標治法で局所付近に鍼灸を施すのがベストではあるが、聞いているとどうも、その痛みを取り合えず早く取り去って欲しいとの思いが強いようだ。


病院に行く暇も無く、数日放って置いたらしいが、どうも ちんたら ちんたら治療に通っている時間も無い様だ。
腫れあがったその母指球の痛みで、仕事にも差し支えているようだ。
もうすでにまな板の上の鯉状態に成っているそのTさん。
 必ず数日後に来院する事を約束して第一回目の治療は終了した。
治療後は母指球の痛みも半減、腫れあがっていた右腕も腫れが引けて軽くなったと喜んでお帰りになった。


  数日後 約束どおり再び来院。
「えがったんし~! いでぐにゃぐなったんし! 鍼灸ってたまげだんしな~! こったに効くおだんしぎゃ! 一発で効ぐどはおもわにゃがった、たまげだ」と絶賛してくれている。
鍼灸の効果を体験したそのTさんは、さらに治療を施してきちんと治そうと思ったと、それから数回通ってきてくれた。


 それがきっかけとなり、ちょっと体調が良くないとはいって、来院してくれるようになった。
活動的なそのTさんの周りにはいつも多勢の人がいる。
誰か具合が悪い人がいたら、自分の経験を話し、「嘘こがれだど思って言って見れ」「なえもそったごどで苦しんでる五度にゃ度?」と…。
社会的にも・人間的にも信用のある人のことばは本当に素晴らしい。


「西の方に 腰が痛イという人あれば、先ずだまされだど思って行って見れ」。
「東に 眠れないという人あれば、苦しんでいるごどにゃガラ、だまされだど思ってまず行って見れ」
南に頭が痛いというひとあれば、そんたごどで何年も苦しんでる五度にゃガラ まず 行って見れ」とそれは昔どこぞの偉い人が言っていた人と重なる。

 

 飾る事も無く・欲を張る事も無く・贅沢をすることも無く、唯一の趣味は登山と読書。
自然と戯れているとき、Tさんの細胞が蘇生するらしい。
すごいスピードで濫読するその脳細胞の吸収力と処理能力の豊かさは半端ではない。
しかも、自らの情報をわたしのようなものに伝えるときのTさんがこれまたすばらしい。 次回へつづく
by wappagamama | 2009-02-12 17:07
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